第4章 ゴースト退治
「八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり――」
それとも『人目も草も かれぬと思へば』の方が合ってるかしらー。
窓を開けて空気を入れ替え、何とか見つけ出した埃だらけの箒と一部が欠けている塵取りで床の埃を集めていく。
時計がないので、どれくらい時間が経っているのかわからないけれど、床に穴を空けないよう掃くのが思いの外に大変だった。
ただ床を掃くだけの作業も慎重にならざるを得ないから、普通にするより時間が掛かっているはず。
まあ、時間がいくら掛かったところで、明日の予定もないようなものなのだけれど……。
……うーん、ダメねぇ。
ふとした瞬間にマイナスな気持ちが舞い戻ってきてしまうので、気分を変えるべく鼻歌を歌う。
掃除のコツは明るく口笛吹鳴らして、憧れの人とダンスを踊るみたいに箒を掃くの。
昔、教えてもらったフレーズを口ずさみながら、のんびりと床を掃く。
暖炉の周りを掃き終え、集めた塵を窓の外へ捨てようと身を乗り出した、その時。
ポツ、と手の甲に小さな雫が落ちた。
続け様にもう一つ、二つ。
やがて屋根を叩く音が静かな館に規則正しく響き始める。
「あらー?雨が降ってきたみたいねー」
思ったよりも勢いが強い雨みたいだ。
お掃除はいったん中止して、雨風が入り込んでこないよう、換気のために開けていた小窓をそれぞれ閉めていく。
鍵が機能していないものもあれば、窓ガラスの欠けが大きくて閉じてもあまり意味のないものもある。
ここにしばらくご厄介になるからには、修理が必要だろう。
もし嵐が来たら吹き飛ばされそうだものねぇ。
半分外れかかって閉められなかった窓の代わりに平たい木片――床か棚の一部だったものだろう――を簡易の雨除けとして立て掛ける。
残るは、この部屋で一番大きな窓を閉めれば……。
その時だった。
雨音と家鳴りしか聞こえなかった館の中に、不意に別の音が混じったのは。
「ぎえー!急にひでえ雨だゾ!」
「!」
今の声は……。
「ぎゃっはっは!コウモリが水鉄砲くらったみたいな間抜けな顔してるんだゾ!」
「グリムちゃん!」
窓の前に立っていたのは、学園からつまみ出されたはずのグリムちゃんだった。