第1章 出会い
夢は深層心理を映すというけれど、魔法使い――じゃなくて、魔法士?さんを目指す夢だなんて初めて見る。
男の子は、一定の年齢になったら魔法使いになれるって兄から聞いたことがあるけれど、女の子もなれるのかしらー?
話を聞く限り、素質がある人じゃないと馬車には乗れないみたいだし……それとも夢の中だから、何か特別な魔法を使えたりするのかな?
わあ、どんな魔法かしらー。魔法の呪文とかあるのかな。
あ、あの狸ちゃんとはお喋りが出来ていたし、動物とお話できる魔法が使えるっていう設定だと嬉しいわー。
それこそ小さい頃からの夢は動物と自由にお喋りすることだったから、夢でも叶うのは嬉しいもの。
この夢の世界における自分の未知なる力を空想すると、本当におとぎ話の世界に迷い込んだ感じがして何だか楽しくなってきちゃう。
動物と仲良くお喋りできる夢――なんてピースフルで素敵だけれど、実際はこの子に炎で襲われて追いはぎされかけたのよねぇ。
そう思いながらチラリと、学園長先生の手に握られた鞭を辿って視線を下げ、縛られっぱなしの狸ちゃんを見やる。
むがむがとくぐもった声と、怒ったようにつり上がった青い目が「離せ!」「ほどけ!」と訴えかけてくるけれど、狸ちゃんを縛る鞭を持っているのは学園長先生なので、狸ちゃんをどうこうする権利は彼が文字通り握っている。
解放の口添えしようにも、タイミングを見計らったように「さっ、入学式に行きますよ」と言われてしまっては、やむなくこのまま進む他なかった。
ごめんね、狸ちゃん。