第4章 見てはいけないもの
それから零くんは少し真面目な顔になって、
「、茶化さずきいて」
「ん、なに?」
くっ…退路を塞がれた気分っ!
「もっと甘えてほしい」
「……」
「我がままも言ってくれ」
「でも……」
「僕が忙しいからって、我慢しないでほしい」
「……気を遣ってたつもりだったんだけどな」
「分かってる」
零くんが優しく微笑んだ。
「でも、その気遣いが……少し寂しかった」
「……そっか」
「僕にも、のことを大切にさせてくれ」
その言葉が、胸に染みた。
「……うん。……じゃあ……」
「ん?」
「今度、お出かけしたい」
零くんの顔が少しだけ申し訳なさそうになった。
「……ああ」
「ちゃんとデートみたいに」
「うん」
「手とか繋いで」
「もちろん」
「腕を組んでみたり」
零くんが笑った。
「いくらでも」
「……ほんと?」
「本当だ」
「ん……楽しみ」
「僕もだ」
そう言って笑う零くんの顔を見ながら、
今日一日ずっと胸の中にあったもやもやが、消えていった。
昼間は、世界で一番嫌な光景を見たと思った。
でも、そのおかげで
自分でも気付かずモヤモヤしていたことを、
初めて口にできた気がする。
――もっと恋人らしいことがしたい。
そんな当たり前の願いをやっと伝えられた。
…………ん???違う違う!伝えなくても『お出かけデートしてないな』って零くんも気付いてよね!?
【見てはいけないもの】
fin