第1章 【もう一度、君に恋をする】
七年前の出会い
、20歳
大学生だった私は、友人に誘われて参加した合コンで一人の青年と出会った。
降谷零、当時22歳。
警察学校に通っているという彼は、無邪気によく笑う人だった。
明るくて、話し上手で、周りへの気遣いもできる。
けれど、ときどき
ふっと笑顔が消える瞬間があった。
何か遠くを見るような目、
その横顔が妙に印象に残っていた。
金髪で目立つ見た目ということもあって、大変なことも多かったのかも知れない。
「さん」
「ん?」
「よかったら、今度二人で食事でもどうですか?」
合コンの帰り際、零くんからそう言われた。
「ありがとうございます。楽しみにしてますね。」
それから、二人で何度か会った。
食事をして。
映画を見て。
公園を歩いて。
他愛のない話をして。
付き合ってはいなかった。
けれど、もう少ししたら、きっと恋人になるような、そんな関係だった。
だからこそ
ある日、零くんから突然、
「……しばらく、会うのをやめましょう。」
そう言われたとき、意味が分からなかった。
「え……?」
「警察学校を卒業したら、配属先が決まります。」
「うん……」
「僕の配属先は、公安になりました。危険な任務もあるところです。」
零の表情に、いつもの柔らかさはなかった。
「危険って……」
「そして、僕だけではなく、
周りの人にも危険がないとは言えません。」
淡々と話す零くん。
でも、その手は膝の上で強く握りしめられていた。
「だから、さんとは……これ以上、近づかないほうがいいと思っています。」
「……どうして」
「あなたを巻き込みたくない。」
「まだ付き合ってもいないのに、そんな……危険なんて、そんなこと、言われても……」
話をうまく理解できない。
「付き合っていないからこそ、今ならまだ間に合うんです。」
「……零くん」
涙を堪えながら零くんを見た。
その瞬間、零くんの瞳が揺れた。
「僕は、あなたが思っている以上に……あなたに惹かれている。」
低い声だった。
「だから……すみません。」
それが、最後だった。
零くんはひどく寂しそうに笑っていた。
七年経った今でも覚えていた。