第12章 それで十分 ※
「ごめんね。迎えに来てくれたみたいだから、もう行くね。」
そう言って、伝票をとって席を立った。
淳くんは、何も言わなかった。
ビルの入り口で、車から降りてこちらへ向かう零が駆け寄り、“よく頑張った”というように抱きしめてくれた。
淳くんがカフェに入ろうとするところを見た瞬間、零に電話をかけて通話状態にしていた。
位置情報は昨日のうちに共有状態にしてある。
「……透さん。ありがとう。世話の焼ける彼女でごめんね。」
「それが僕の生き甲斐だから。」
車に乗り、走らせる。
私はまた服やバッグに盗聴器などがないかを確認したが、今回は何も無さそうだった。
付けてもすぐ見つかると思ってあきらめたのかも知れない。
「良かった。今日は何もなさそう。」
「僕は浮気なんかしていない。」
「え…?うん、分かってるよ?あれは適当に言っただけだからね。」
「慰めてあげたかったのか?」
「……あれも適当に言っただけだよ。」
「普段は経験値低いとか言っておいて、ずいぶん高そうだったな。」
「そう?どれのことか分かんないけど、零以外なら照れないから何言われてもわりと平気だなって思った。」
「……そうか。」
「妬いた?」
「うん、妬けた。僕以外の男と話すのを聞くのは不快だ。」
「ん、そこね。」
「はすぐ好かれるな。」
「見た目がそこそこだから狙ってみてるだけじゃないかな。中身を知っても愛してくれるのは零くらいだと思うよ。」
「中身を知ればますます好きになるだろ。」
「……へぇー。」
「… ひとまずありがとう。
恐らくあのやり取りから、は部外者だと認識したと思う。まぁ、彼はどちらにしても君を助けるために仲間にはそう報告するだろうが。」
「あ、単独犯じゃなかったんだ……」