第10章 二人の帰る家
「、僕がプロポーズの後に言ったことばを覚えてるか?」
「え?色々言われすぎて…どれのこと?」
「『気負わないで、ただ、傍にいてくれればいい。』と言ったこと。」
「ふふっ。うん、覚えてるよ。」
「、君のままで、自由にして。」
「……? どういう意味?」
「帰ってきた僕に、何かしてあげたいと思わなくていい。
本を読んでいても、動画や映画を見ていても、部屋にこもっても、君は自由に過ごしていいんだから。」
「…………」
「たしかに僕はにかまってほしがるし、はそれを察しているんだと思う。だが、このままだとが起きているあいだの全ての時間を奪ってしまいそうな勢いだ。
少し、疲れてきただろ?」
「ううん…そんなことは……」
「自由が欲しそうな顔してる。」
「……そう、なのかな…。」
「僕は、どうしてもにかまってほしくなれば、自分からいくから気にしなくていい。」
「ふふっ。たしかに……そうだね。」
「たぶんが何してても邪魔する。」
「ありがとう、零くん。」
なんだかすごく気持ちが楽になった。
手のかかる恋人でごめん。
やっと息が思いっきり吸えるような感覚になり、夜空を見上げた。
「……星が、きれいだね。」
「そこは月が綺麗と言って欲しかったな。」
「…んん?そんな文学的な情緒溢れる表現、私にできると思う?」
「はははっ。そうだったな。」
「“あなたを愛しています”
――だったかな?」
「…………あぁ、そうだな。」
「私にとって、月はずっと綺麗だったから。」
とても零くんの顔を見ながらでは言えなくて、月を眺めながら呟いた。
「奇遇だな。僕もずっと、月が綺麗だと思っていたよ。」
夜空を眺めていても、隣からの熱い視線を感じる。
チラッと零くんの方へ目を向けると、
「努力賞だな。」
と微笑んだ。
「けっこう恥ずかしいね、これ。ストレートに言う方がまだましかも…。」
「ははっ。周りに人がいなくてよかった。」