第10章 二人の帰る家
「ん?だから、『同棲したいと思う?』って。」
「それは聞こえた。」
「あー…だよね。なぜかこうしたい気持ちになって。たぶん零くんにされたからかな?」
「……記憶ないんじゃなかったのか?」
「断片的に覚えてるよ。」
「どのあたり?」
「零くんが、私の記憶がないのをいいことに嘘ついてたのは覚えてる。」
「んー…記憶にないな。」
「あと、ムードもなく誘ったりしないとかいいながら、『もうここでいい?記憶がないうちにやりたい』とか言ってた。」
「……そうだったか?」
「忘れておいてほしかった?それとも忘れたフリしておこうか。」
「ひとまず、そのことは今はおいておこう。」
「そうだね、話それちゃうし。おふざけはやめよう。」
「それで?なんで急にそんなこと言いだした?結婚を先送りにしたくなったか?」
「わーーーーお。」
「……。真面目に。」
「あ、ごめん。先送りにしようとかじゃないよ。
まだいつ入籍するとも決まってないでしょ?だからそれまで一緒に住めたらいいなって。」
「なるほど?それが僕への説明用ってことだな。」
「……んんっ。どういうことかな?」
「さっきは、僕が『結婚を先送りにしたくなったのか』 と聞いたとき、ふざけてはいたが感嘆の声をあげたな。
それは僕の発言が正解にも近く驚いた、ということだろう。
先送りにしたいというのが、もしの意思であれば、君は僕に訳を話したうえで『延期しよう』と誠実に向き合って提案すると思う。
それをしないということは、君以外の意見。おそらく、“付き合って数ヶ月で入籍するのは早いから同棲してお互いを知ったほうがいい”というアドバイスがご両親からあったんじゃないか?
には、相手の意見を無下にできず、希望をできるかぎり叶えようとする傾向があるから、期間は短いが形だけでも同棲という実績を作り、ご両親も納得させられる形を考え、僕に同棲の意思があるかを尋ねた。そういうことか?」