【ごちゃまぜ】SHORT STORY【ヒロアカ】【鬼滅の刃】
第11章 ヒーローの、甘え方。
【 02 】
「……おい」
カギを回して玄関を開けた瞬間、背後から覆いかぶさるように重たい体温が降ってきた。
いつもなら絶対に緩めない緊張感が、今夜の勝己には微塵もない。明日は滅多にない完全なオフ。緊急呼出の端末を切り、珍しくタガが外れたように飲んだ酒のせいで、彼の体はすっかり熱を帯びていた。
「勝己? ちょっと、重いって……靴脱げないでしょ」
「黙れ……動くんじゃねェ……」
鍵を閉める音と同時に、私の肩口に金髪が埋められる。首筋に吹きかかる吐息が熱い。
プロヒーローとして四六時中気を張っている男が、酒の勢いと圧倒的な安心感に身を任せて、子供のように体重を預けてきている。
「勝己、行こう?ちゃんとベッドで……」
「ここがいい」
「えっ」
「……お前が触れるとこなら、どこでもいい」
掠れた低い声が、耳元を直接揺らす。いつもなら「誰が甘えてるだアホ」と突っ返してくるはずの男が、腕の力を強めて私を逃がさないように抱きしめてくる。
抗う間もなく、二人の体重に耐えかねてそのまま玄関の床に倒れ込んだ。勝己は私の胸元に顔を深く埋め、大きく息を吐き出した。
「今日……酒、解禁っつったの……お前だろ」
「うん。たまには息抜きしなよって言ったけど……こんなに飲むとは思わなかったよ」
「……お前が目の前にいんだから、酔うに決まってんだろ」
頭を撫でてやると、勝己は満足そうに「ん……」と小さな鼻鳴らしを漏らした。強気な赤色の瞳が、お酒と眠気でとろんと揺れている。
「……」
「なに?」
胸元に熱い顔をぐりぐりと押し付けながら、私の服をぎゅっと掴む手が強くなる。
「……明日、一日中どっこも行くな」
「行かないよ。ずっと一緒にいる」
「……どっか行ったら、マジで怒る」
子供みたいな我儘を言いながら、力強い手が私の服の裾を掴んで離さない。
普段は誰よりも頼もしい「絶対的ヒーロー」が、私のためだけに開けてくれた無防備な隙間。
その愛おしさに胸が熱くなり、もう一度、その柔らかい髪に指を埋めた。