第78章 後日談
「ねえ、五条さん」
「んー?」
ソファに寝転がっていた五条が、スマホから顔を上げる。
彼女は少し迷ってから、口を開いた。
「……もし私が、脹相と結婚したら」
「…………」
五条の動きが止まった。
「……君、もう結婚考えてるの?」
「ち、違う!」
「付き合い始めたばっかりなのに?」
「そういう意味じゃなくて!」
「へぇ~」
にやにやと笑う五条に、彼女は頬を膨らませる。
「もう、ちゃんと聞いて」
「はいはい。で?」
「私が脹相と結婚したら……五条家って困ったりしない?」
「……」
五条は少しだけ笑みを消した。
「どうして?」
「だって、私……五条さんに保護者になってもらってるし。五条家にもいろいろあるでしょう?」
「まあね」
「それに、前に禪院家にも、声は…かけられてたし……」
彼女の声が少し小さくなる。
「私が脹相と結婚したら、余計に面倒なことになったりしないのかなって」
「……あー」
五条は納得したように頷いた。
「なるほどね」
そして、少し考えたあと。
「大丈夫だよ」
「本当に?」
「うん」
即答だった。
「五条家が困ることなんてない」
「でも――」
「ないない」
五条は笑う。
「そもそも、君が誰と結婚するかで五条家の都合を優先する必要なんてないでしょ」
「……」
「君の人生なんだから」
そう言って、五条は彼女の頭をぽん、と撫でた。
「僕が君を守ってるのは、五条家のためじゃないよ」
「……五条さん」
「君が大切だから」
彼女は黙って五条を見る。
「だから、君が好きな人と一緒になりたいって思ったなら、それでいい」
「……脹相でも?」
「脹相でも」
五条は即答する。
「むしろ僕としては、早く結婚してくれてもいいくらい」
「え?」
「だってさ」
五条は少し笑った。
「禪院家に狙われる心配があるなら、脹相のところに行った方が安心じゃない?」
「……そうなの?」
「そうだよ」
五条はあっけらかんと言う。