第74章 五条のイチオシの人と
その問いに。
私はすぐには答えられなかった。
ただずっと張りつめていたものが、とうとう切れたように。
涙が一粒、頬を伝った。
「……好き」
脹相の目が僅かに見開かれる。
「ずっと好きだった」
「……そうか」
脹相の声が震える。
「……そうか」
それしか言えない。
私は泣きながら笑う。
「じゃあ……お見合い、意味なかったね」
「いや」
脹相は首を横に振る。
「意味はあった」
「……?」
「俺が、お前に告白する覚悟を決められた」
そして。
「それに」
ほんの少しだけ、困ったように笑う。
「お前が他の誰かに会おうとしていると知ったとき、俺は……思っていた以上に嫌だった」
「……ふふ」
「笑うな」
「だって」
私は涙を拭う。
「脹相も嫉妬するんだ」
「する」
即答だった。
その答えが嬉しくて。
私はもう一度、脹相との距離を縮めた。