第74章 五条のイチオシの人と
そして、お見合い当日。
私は鏡の前に立った。
何日もまともに眠れていない。
目の下には薄く隈があり、頬も少し痩せた気がする。
けれど。
「……大丈夫」
メイクで隠せば、なんとかなる。
髪を整え服を選ぶ。
いつもより少しだけ丁寧に身支度をする。
五条に言われた通り、とびきり綺麗に。
今日だけはちゃんとした自分でいよう。
そう思った。
待ち合わせ場所。
私は少し緊張しながら、指定された店の扉を開けら先に指定された部屋に着く。
そしてそのすぐ後に部屋に通された人を見て驚いた。
「……え?」
「……脹相?」
脹相だった。
「……」
脹相も、私を見て固まっている。
しばらくどちらも何も言えなかった。
「……どうして」
私の声が震える。
「いや……」
頭が混乱する。
「待って」
私は一歩下がった。
「これ……」
脹相が私を見る。
その顔から、すぐに何かを察した。
「……お前」
「なに?」
「眠れていないのか?」
「……」
「顔色が悪い」
「メイクしてるから大丈夫」
「そういう問題ではない」
脹相が近づく。
私は反射的に一歩下がった。
「……来ないで」
「……」
その言葉に、脹相が止まる。
「ごめん」
私は俯いた。
「変なことに巻き込んでごめん!」
「……何?」
「五条さんに頼んで、お見合い取り付けてもらったの」
「……」
「でも、まさか相手が脹相だなんて思わなくて」
私は立ち上がる。
「だから、もう――」
その瞬間、視界が揺れた。
「……あ」
足元がふらつく。
次の瞬間、身体が支えられた。
「……!」
脹相の腕が、私の身体をしっかり支えている。