第72章 大変だった
もうすぐ今まで何度も心の中で繰り返した言葉を
今度は本人に伝える。
酔っておらず、眠っていないときに。
そして彼女自身が、冷静に自分の気持ちを選べるときに。
「……俺は、お前が好きだ」
誰もいない場所で、脹相は一度だけ口にした。
その声は、今までになく迷いがない。
胸の奥に、昨夜の言葉が蘇る。
――脹相が好きだよ。
そして。
――どうやったら、私を好きになってくれる?
脹相は目を閉じる。
「……俺は、もう好きだ」
誰もいない廊下で今度こそ、誰にも聞かれないように小さく呟いた。