第71章 誕生日パーティー
「……お前」
脹相は私の顔を覗き込む。
頬は少し赤く、目も閉じている。
それでも、まだ起きていると思った。
「俺に好きになってほしいのか?」
「……うん」
その小さな返事に脹相の胸が、また大きく鳴った。
「……そうか」
どう答えるべきか。
いや、答えは決まっている。
決まっているのに、口に出すのが怖かった。
ずっと欲しかった言葉を、今なら自分から渡せる。
「俺は――」
脹相はそこで一度言葉を止めた。
私の顔を見つめる。
「……もう、好きだ」
返事がない。
脹相は少し首を傾げた。
「……聞いているか?」
「……」
静かだった。
「〇〇?」
肩に触れても反応はない。
けれど、眠っているというほど息が深くも見えなかった。
さっきまで言葉を交わしていたのだから。
「……眠いのか?」
「……ん」
小さな声。
脹相は少し安心する。
まだ起きている、そう思った。
「なら、聞いてくれ」
脹相は、ゆっくりと言葉を続ける。
「俺は、お前が好きだ」
返事を待つ。
……返ってこない。
「……〇〇?」
少しだけ身体を揺らす。
「……ん」
やはり、小さな声だけ。
「俺に好きになってほしいと言っただろう」
「……うん」
「だから、答える」
脹相は私の顔を覗き込む。
「俺は、もう好きだ」
今度こそ返事を待ったけれど何も返ってこない。
「……」
脹相はしばらく黙っていた。
もしかしたら聞こえていないのかもしれない。
そう思って、もう一度。
「おい」
頬にそっと触れる。
「聞いているか?」
……反応がない。
「……」
少しだけ眉を寄せる。
「〇〇?」
それでも動かない。
脹相は数秒、そのまま私を見つめた。
そして。
「……まさか」
そっと顔を近づける。
規則正しい呼吸。
完全に力の抜けた身体。
先ほどまで自分の服を握っていた手も、今は力なく胸元に置かれている。
「……寝たのか」
ようやく気づいた。
あまりにもあっさりと。
自分にとっては人生で一番聞きたかった言葉を口にした直後に。