第71章 誕生日パーティー
「じゃあ、僕はそろそろ行くね」
朝。玄関先で五条が靴を履きながら言った。
今日は五条家の少し広い場所で、私の誕生日を祝う集まりがある。私と脹相もそこに参加する予定だったが、五条はあいにく仕事が入ってしまった。
「じゃあ、私たちも行ってくる」
「うん。楽しんでおいで」
五条は笑いながら手を振る。
そして、ドアノブに手をかけたところで。
「あ」
突然、何かを思い出したように振り返った。
「そうそう」
「?」
五条が私を見る。
「いいかい?」
「うん?」
「ぜーったいに、お酒は飲まないこと」
「……え?」
あまりにも念を押されて、私は目を瞬いた。
「アルコールが入ったものもダメだからね」
「分かってるよ」
「本当に?」
「本当に」
「少しだけ、とかもなし」
「……うん」
「料理に入ってるものとかも、ちゃんと確認すること」
「そこまで?」
「そこまで」
五条の笑顔はいつものように明るい。
でも、言っていることは妙に真剣だった。
「私、そんなに信用ない?」
「信用してないんじゃなくて、心配してるの」
「未成年だから?」
「……まあ、それもある」
やっぱり。
私は少し頬を膨らませた。
「もう、飲まないってば」
「うん。約束ね」
それから五条は脹相を見る。
「脹相」
「……なんだ」
「悪いけど、今日は見張ってて」
「何をだ?」
「お酒」
五条は真剣な顔で言った。
「この子がアルコールを口にしないように、ちゃんと見ててね」
「分かった」
脹相が頷く。
「任せておけ」
「頼んだよ」
そう言って、五条は出ていった。
ドアが閉まり、私はしばらく玄関を見つめた。
「……なんだったんだろう」
「さあな」
脹相が答える。
「俺にも分からない」
「子どもだから飲ませたくないだけだよね」
「ああ。そうだろう」
二人とも、まだ知らない。
五条があれほど念を押した本当の理由を。