第70章 誕生日のその後
「その後、水族館に行ったの」
「水族館?」
「うん。私が前に行きたいって言ってたから、連れてってくれて。それからカフェにも行ったよ。新作のフラペチーノが飲みたいって言ってたのも覚えてたみたい」
「……へぇ」
「本当に、私が前に言ったことをよく覚えてるんだよね」
「……うん」
五条が少し黙った。
「どうしたの?」
「いや。続き聞こうかなって」
「あ、それでね、前から欲しいって言ってたネックレスも買ってくれたの」
「へぇ……どんなの?」
「ペアのやつ」
「……ペア?」
「うん。前に見つけて欲しいなって思ってたんだけど、ペアだったから買えないって諦めてたの。でも脹相が覚えててくれて」
「……脹相とペア?」
「そう」
「…………」
五条が黙り込む。
私は首元に触れた。
「ほら、これ」
「……なるほどね」
「?」
「いや、なんでもない」
そのまま私は話を続けた。
「夜は、私が行きたいって言ってたお店に連れてってくれて、帰りにはシュークリームも買ってくれて。あ、あと家に帰ってから、お風呂も泡風呂にしてくれて……髪も乾かしてくれた!」
「…………」
「五条さん?」
「……ねえ」
「はい?」
「それ、本当に脹相?」
「そうだけど」
「そっか……」
五条が遠い目をする。
「……頑張ったねぇ、脹相」
「何が?」
「いや、なんでもない」
「変なの」
「で、まだあるの?」
私は少し笑った。
「ふふ、あとはね、抱き枕になってくれた」
「…………は?」
「私、前に抱き枕が欲しいって言ってたから。使ってみないかって」
「……脹相が?」
「うん」
「…………」
五条はとうとう片手で顔を覆った。
「……君たちさぁ」
「なに?」
「いや、なんでもない」
しばらくして、五条が小さく息を吐く。
「……楽しかった?」
「うん。すごく」
「そっか」
「本当に嬉しかった」
「……そっか」
今度の「そっか」は、からかうようなものではなかった。
ただ、私が楽しそうに話していることに、少し安心したような――そんな声だった。