第70章 誕生日のその後
翌日の昼過ぎ。
任務の報告を終えて部屋を出ると、廊下の先に五条さんがいた。
「お、いたいた」
「五条さん?」
「昨日誕生日だったでしょ。改めて、おめでと〜」
そう言って、五条が小さな紙袋を差し出してくる。
「ありがとうございます」
「昨日渡そうと思ってたんだけど、ちょっと予定が合わなくてさ。まあ、一日遅れでも許してよ」
「もちろんです」
受け取ると、中には小さな箱が入っていた。
「開けていい?」
「もちろん」
中には、私が前から好きだと言っていたお菓子が入っていた。
「……これ」
「好きだったでしょ?」
「よく覚えてたね」
「僕、こう見えて君たちのことちゃんと見てるからね」
「ふふ、ありがとう」
少しして、五条が何気なく聞いた。
「で?」
「ん?」
「昨日はどうしてたの?」
「昨日?」
「誕生日。せっかくだし、どっか行った?」
「ああ」
私は少し考えてから笑った。
「うん。脹相と一緒にいたよ」
「へぇ」
五条の声が少しだけ弾む。
「朝から?」
「うん」
「朝から一緒?」
「だって一緒に住んでるし」
「まあ、それはそうなんだけど」
五条は笑いながら肩をすくめる。
「誕生日くらい、どっか連れてってくれたのかなって」
「うん。いろいろ叶えてくれた」
「へぇ。例えば?」
「朝はね、私が前に言ってた通り、ゆっくり起こしてくれた」
「……脹相が?」
「うん」
「どうやって?」
「頭撫でて」
「……へぇ」
五条の返事が、一瞬だけ妙に間延びした。
私は気にせず続ける。
「それから朝ごはん作ってくれて」
「何?」
「和食。味噌汁もあったよ」
「朝から味噌汁?」
「うん。私が前に、朝から味噌汁食べたいって言ったの覚えてたみたい」
「……なるほど」
五条が顎に手を当てる。
「それから?」
「ショッピングに付き合ってくれた」
「脹相が?」
「うん」
「嫌がらなかった?」
「全然。私が迷ってる間もずっと待っててくれた」
「ふーん」
五条が何か考えているけれど、私はそれにも気づかない。