第66章 白無垢のモデル
「五条さん!」
「はい」
「絶対ダメ!」
「え?」
「脹相をモデルにするの!?」
「でも、カメラマンさんが――」
「ダメ!」
私は小声ながら必死だった。
「だって!」
「うん」
「かっこいい脹相が世に出るかもしれないんだよ!?」
「……」
五条が一瞬黙る。
「……そこ?」
「そこ!」
「そんなに嫌?」
「嫌!」
「なんで?」
「……」
私は言葉に詰まる。
「……ただでさえかっこいいのに…人気出ちゃうじゃん」
「……」
五条がじっと私を見る。そしてものすごく楽しそうな顔をした。
「なるほどね」
「何がなるほどなの!」
「別に?」
「……」
脹相が会話を聞きながら困ったようにこちらを見る。
「○○」
「なに?」
「嫌なら」
脹相が静かに言う。
「俺は出なくていい」
「……」
「無理にやる必要はない」
「……」
その言葉に少しだけ胸が痛くなる。
でもやっぱり、雑誌や広告に脹相のかっこいい顔が載るのは嫌だった。
するとカメラマンが。「あの」と口を挟んだ。
「では、こういうのはどうでしょう」
「?」
「カメラの角度を変えます」
カメラマンが脹相を見る。
「彼には顔が映らない位置に立ってもらいます」
「……顔が?」
「はい」
「後ろ姿とか?」
「完全な後ろ姿でもいいですし」
カメラマンが少し位置を調整する。
「横顔も、カメラからは見えない角度にします」
「……」
「〇〇さんは、彼のほうを見てください」
「私が?」
「はい」
「……」
カメラマンが笑う。
「彼の顔は写真には出ません」
「……」
「でも、お二人の間にある雰囲気は写せます」
私は脹相を見る。
「……」
脹相もこちらを見ている。
「……」
少しだけ考える。
そして。
「……それならいいです」
「ありがとうございます!」
カメラマンがすぐに準備を始め、脹相が指定された位置に立つ。
カメラに対して背を向けるように。
けれど私のほうには身体を少し向けている。
そのためカメラからは脹相の顔は見えない。
見えるのは大きな背中と肩。
そして私へ向けられた身体だけ。