第66章 白無垢のモデル
「では〇〇さん」
「はい」
「彼を見てください」
「……」
私は脹相を見る。
「……」
ただそれだけなのに、胸がどくん。と高鳴る。
さっきまで五条の隣で作っていた笑顔とはまるで違う。
自然に口元が緩み。目元が柔らかくなる。
「……」
脹相がそこにいる。
私の大切な人。
いつも私を気にかけて、私が困っていれば助けてくれて。
何も言わなくても私を守ろうとしてくれる人。
その人を今、白無垢姿の自分が見つめている。
カシャ。
「……!」
カメラマンが。
シャッターを切る。
「そのままです」
カシャ。
「すごくいい」
カシャ。
「もう少しだけ、彼のほうを見て」
「……はい」
私はもう少しだけ、脹相を見る。
その瞬間表情がさらに柔らかくなる。
嬉しいけど恥ずかしい。大切。好き。
そんな気持ちが全部、隠せないまま顔に出てしまう。
「……」
スタジオの空気が変わり、スタッフが思わず作業の手を止める。
「……」
五条も黙ってモニターを見る。
さっきまでの写真とは明らかに違う。
五条との写真は綺麗だった。
完璧だったけれど、今の写真には温度がある。
白無垢姿の〇〇が目の前の人を見つめる。
その表情だけで誰が見ても分かる。
――この人が好きなんだ。
――この人の隣にいることが幸せなんだ。
脹相の顔は写っていない。それなのに、
その写真には二人の関係そのものが写っているようだった。