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①呪術廻戦〜脹相〜

第66章 白無垢のモデル


「……」

脹相は無意識に拳を握った。

白無垢。

花嫁衣装。
その言葉が頭に浮かぶ。

 ――彼女が誰かの花嫁になる。
そんな光景を想像した瞬間、胸の奥がひどくざわついた。

理由なんて、考えるまでもない。
ただ――嫌だった。

「もう少し顎を引いてください」

「はい」

スタッフの声に、彼女が静かに応じる。
伏せられた睫毛。
白い衣に包まれた細い指。

その一つ一つが、脹相の視線を引き寄せる。

そして、ふいに。
彼女が顔を上げた。

まっすぐ前を向いた瞳が、ほんの一瞬だけこちらを掠める。

「……!」

脹相は息を呑んだ。
見つかった――と思ったが彼女は気づかなかったらしい。
すぐにカメラへ視線を戻す。

脹相は胸元に手を当てた。
心臓が、うるさい。

「……落ち着け」

小さく呟く。
けれど無理だった。
どうしても目が離せない。

まるで、目の前にいる彼女だけが別の世界にいるようだった。
白い光の中に立っている姿は、あまりにも綺麗で。

どこか儚げで。
今にもそのまま消えてしまいそうで。

 だからこそ――。

脹相は、強く思った。

消えないでほしい。
誰かのところへ行かないでほしい。

ずっと、自分のそばにいてほしい。

そんな自分勝手な願いが、胸の奥から溢れてくる。

「……俺は、どうしたんだ」

 自分でも分からない。

 ただ一つ分かるのは。

 目の前の彼女を見た瞬間から――

 今まで曖昧にしていた気持ちを、もう誤魔化せなくなってしまったことだけだった。

 そして少し離れたところで、そんな脹相の様子をちらりと見た五条は。

「……ふーん」

 口元だけを楽しそうに上げた。

「やっぱり連れてきて正解だったかもね」
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