第66章 白無垢のモデル
「ねえ、#NAME#ちょっと頼みがあるんだけど」
私の保護者である五条が、妙に楽しそうな顔で言ってくる
「……何?」
「白無垢のモデル、やってくれない?」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「モデルなんて、他にもいるじゃん」
「いるよ?」
「じゃあ、その人たちに頼めばいいじゃん」
「でも向こうが君をご指名なんだって」
「なんで私?」
「君、五条家で小さい頃から着物に慣れてるでしょ。着付けてもらった時の立ち姿とか、歩き方とか。ちゃんと魅せ方が分かってるから」
「……」
「それにさ、君、昔から和装似合うし」
さらりと言われて、私は渋い顔をする。
「……絶対断る」
「えー?」
「白無垢って……花嫁衣装じゃん」
「そうだけど?」
「重いだろうし恥ずかしいし、私は結婚する時に初めて着たいんだけど」
「でも撮影だけだよ?」
「……」
しばらく悩んでいると、五条が追い打ちをかけるように言った。
「ちなみに僕も和装で声がかかってるから、一緒に行くことになってるよ」
「……それなら、まあ」
五条一人で行かせるのも不安だ。
私は渋々頷いた。
「仕方ない。分かった」
「やった」
五条が満足そうに笑う。
けれど、そこで私は大事なことを思い出した。
「……あ」
「ん?」
「脹相には言わないでよ」
「え?」
「絶対だからね!」
私は五条を指差した。
「白無垢なんて……脹相に見られたら恥ずかしくて死ぬから!」
一瞬。
五条の目が丸くなる。
そして――にやり、と笑った。
「分かってるよ」
「本当に?」
「もちろん」
その返事を信じた私が馬鹿だった。