第65章 文化祭の写真
その時廊下の向こうから。
「脹相ー!五条さーん!」
聞き慣れた声が響く。
二人が。
同時に振り返る。
「……〇〇?」
〇〇が人混みの向こうからこちらへ向かって歩いてくる。
「いた!」
彼女は二人を見つけると小さく手を振った。
「もう、どこ行ってたの?」
「写真部」
五条が。
何でもないように答える。
「写真部?」
あなたが展示スペースを見る。
「へぇ……」
そして。
壁に並んだ写真へ目を向けると自分が写っている写真を見つける。
「私の写真、こんなにあるんだ」
「……ああ」
脹相が答える。
〇〇が振り返る。
「脹相、見たの?」
「……見た」
「どうだった?」
「……」
脹相が一瞬だけ言葉に詰まる。
五条が横でニヤリと笑う。
「脹相、君の写真買ってたよ」
「五条」
「え?」
私は目を丸くする。
「買ったの?」
「……ああ」
「どれ?」
「……」
私が少し近づくが、脹相は答えない。
「見せて?」
「……嫌だ」
「なんで!?」
思わず笑う。
「私の写真なのに」
「だからだ」
「え?」
「……」
脹相は。
少しだけ視線を逸らす。
「見せるのは……恥ずかしい」
「……」
彼女はきょとんとしたあと、ふっと笑った。
「脹相って、たまに可愛いね」
「……」
脹相の動きが止まる。
五条が。
「あーあ」
と呟く。
「また固まった」
「五条さん、何?」
「いや」
五条は楽しそうに笑いながら。
「青春だなぁって」
「……?」
あなたが首を傾げるその隣で、
脹相は誰にも見られないように内側にしまった二枚の写真を
そっと確認していた。
折れていない。
傷もない。
ちゃんとそこにある。
それだけで、少しだけ安心する。
そして目の前で笑っているあなたを見て。
脹相は思う。
写真も大切だ、けれどやはり写真の中ではなく、
今ここにいる〇〇を自分の目で見ていられることのほうが
ずっと大切だった。