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①呪術廻戦〜脹相〜

第61章 あいつが俺を好きかもしれない


高専の廊下。
任務から戻った脹相は、珍しく足を止めた。

少し先に五条がいる。

「五条」

「ん? なに、脹相」

「……少し、聞きたいことがある」

「珍しいね。僕に相談?」

五条が面白そうに振り返る。

脹相はしばらく黙っていた。

言葉にするのが難しい。

自分でも、まだ整理できていない。

「……〇〇のことだ」

「ああ」

五条はすぐに察した。

「恋人役の話?」

「……そうだ」

「何かあった?」

脹相は少しだけ視線を落とす。

「……あいつが」

「うん」

「俺のことを……好きなのかもしれない」

五条の口元が、ゆっくり上がった。

「へえ?」

「それ、脹相から言うんだ?」

「俺も……そう思い始めただけだ」

「何があったの?」

脹相は少し迷ってから話した。

花火の日、
二人で花火を見て手を握ったこと。

指を絡め少し引き寄せたこと。

肩を抱いても嫌がられなかったこと。

「……それだけ?」

「それだけではない」

脹相は静かに続ける。

「俺が近づいても、離れなかった」

「うん」

「手を握っても、嫌がらなかった」

「うん」

「肩を抱いても……そのままだった」

「うんうん」

「それに……」

脹相は言葉を止める。

五条が首を傾げる。

「それに?」

「……俺と花火を見るために、途中で帰ってきた」

五条の表情が変わった。

少しだけ優しい顔になる。

「そっか」

「……それだけなら、まだ分からない」

脹相は真剣だった。

「俺が勝手に期待しているだけかもしれない」

「……」

「恋人役だから、俺が何をしても拒まないだけかもしれない」

「うん」

「本人に聞けば分かることだ」

「まあね」

「だが……聞けない」

五条は少し黙った。

「どうして?」

「……今の関係を壊したくない」

その答えに。

五条は小さく笑った。

「脹相って、意外と臆病なんだね」

「……そうかもしれない」

「意外と素直じゃん」

「茶化すな」

「ごめんごめん」

五条は壁にもたれた。

「でもさ、あの子が本当に脹相のこと好きだったら、どうする?」

脹相は答えなかった。

しばらくして。

「……分からない」

「嬉しい?」

「……」

少しの沈黙。

「……嬉しい」

その声は小さかったが嘘のない声だった。
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