第60章 花火大会では少しだけ積極的に
――ヒュウゥゥ……
最後の大きな花火が夜空へ昇っていく。
脹相は、彼女の小さく柔らかな手を握ったまま。
肩を抱く腕を少しだけ強める。
そして。
――ドンッ!!
夜空いっぱいに、光が咲いた。
その光の中で彼女は脹相の肩に頭を預ける。
「……落ち着く」
その一言に。
脹相の身体がわずかに固まった。
「そうか」
「あったかいし」
「……そうか」
それ以上は言えない。
ただ。
肩を抱く腕だけが、ほんの少し強くなる。
脹相は彼女の頭に頬を寄せたまま。
静かに目を閉じる。
――好きだ。
けれど、言わない。まだいえない。
この時間を壊したくない。
だから。
今は。
繋いだ手と。
抱いた肩と。
寄せた頬。
それだけでいい。
それが今の脹相にできる。
精一杯の「好き」だった。