第60章 花火大会では少しだけ積極的に
――ドンッ!!
大きな花火が夜空いっぱいに広がる。
その光の下。
脹相の頬が、私の髪に触れている。
「……脹相?」
「……少し、このままでいたい」
花火の音に消えそうなほど、小さな声。
「……うん」
私は素直に頷く。
「いいよ」
その瞬間。
脹相の胸が大きく鳴った。
――ドンッ。
また花火が咲く。
けれど。
それよりも。
自分の鼓動の方が大きく聞こえる。
――まただ。
手を握っても。
指を絡めても。
こちらへ引き寄せても。
肩を抱いても。
こうして頬を寄せても。
彼女は嫌がらない。
むしろ。
安心したように身体を預けている。
「……」
脹相は目を閉じる。
花火が上がるたびに。
〇〇の横顔が光に照らされる。
そして。
昼間に聞いてしまった言葉が蘇る。
――そばにいてくれる。
――すごく好き。
彼女は自分が聞いていたことを知らない。
だから今も何も知らずに自分の腕の中で花火を見ている。
「……」
脹相は、反対の手でもう一度彼女の手を握り直す。
すると。
彼女の指もほんの少しだけ握り返してくれた。
――ドンッ!!
脹相の胸が跳ねる。
――本当に。
この人は。
俺のことを好きなのかもしれない。
そんな考えが。
今度こそ、消せなくなった。
けれど。
信じるのが怖い。
自分がそう願っているだけかもしれない。
あなたは優しいから。
恋人役だから。
だから拒まないだけなのかもしれない。
それでも。
今、この瞬間だけは。
そんなことを考えるのをやめた。