第59章 花火大会
「……本当に好きなんだな」
「うん、めっちゃ好き」
「なんか分かった」
「何が?」
「○○がその人のこと、すごく大事にしてるってこと」
「……」
少し恥ずかしくなって俯く。
「そうかも」
男子が苦笑する。
「この前見た時は、恋人って雰囲気には見えなかったけど、あの違和感は〇〇の気持ちが大きすぎたからかな。」
「……まあ」
「〇〇の方が愛重そう」
「…そうだろうね」
「自覚あるんだ」
「あるよ」
私は苦笑した。
「だって、好きなところ聞かれて、こんなに出てくるんだもん」
「確かに」
私は少し黙ってから。
「でも……」
「ん?」
「本人には、こんなこと言えないけどね」
「なんで?」
私は少しだけ俯く。
「……今の関係、壊したくないから」
その言葉が。
木陰の向こうにいた脹相の耳に、はっきり届いた。
「……」
脹相は動けなかった。
〇〇を迎えに来る。
ただそれだけのつもりだった。
けれど、〇〇が自分のことを。
嬉しそうに話し、好きだとそう言っている。
一つ一つ話していることは、自分がしてきたことだった。
特別なことをしているつもりはなかった。
困っていたら助ける。
辛そうなら支える。
頑張っていたら褒める。
迷っていたら話を聞く。
そばにいた方がいいなら、そばにいる。
それだけだった。
なのに。
彼女にとってはすごく特別だった。
そして。
「花火、脹相と一緒に見たいから帰ってくるの」
昼間のあなたの言葉が、脹相の中で重なる。
「……」
自分と花火を見るために。
あなたは帰る。
自分のために。
そこまで考えてくれていた。
脹相は静かに目を伏せた。
胸の奥が熱い。
今日、浴衣姿の〇〇を見た時から感じていた落ち着かなさ。
他の男と歩いているのを見た時の苛立ち。
そして今。
彼女が自分を好きだと知った時の、どうしようもない嬉しさ。
それらをただの「恋人役」で片づけるには、
あまりにも、リアルだった。