第58章 一般と高専の両方
「……」
「それを私たちの代で終わらせるんじゃなくて、次の世代にもちゃんと渡したい」
脹相は黙って聞いている。
「もちろん、記録に残したり、教えたりすることも大事だと思う」
私は少し考える。
「でも、術式ってなると、それだけじゃないでしょ?」
「……術式の継承か」
「うん」
「確かに、家系によって受け継がれる術式もあるな」
「そうそう」
私は頷いた。
「術師同士の間に生まれた子の方が、術式を継ぎやすいこともあるし」
「……そうだな」
そこで、私は少しだけ言葉を止めた。
「だからね」
「?」
「もし、いつか私に子どもができて、その子に術式があったら……」
脹相が静かにこちらを見る。
「その子が困らない選択をしたいなって思う」
「……困らない、選択?」
「うん」
私は前を向いた。
「例えば、私が普通の生活を選んで、その子もそれを当たり前みたいに強いられてしまったら嫌なの」
「……」
「その子には呪術の世界に行く選択肢が必要なのに、私が『普通の方が楽だから』って選んだことで、その子が苦しむことになったら……」
少しだけ眉を下げる。
「私が楽をしたせいで、その子が苦しむのは嫌だなって」
脹相は何も言わない。
「もちろん逆もあると思う」
私は続ける。
「私が呪術の道を選んだからって、その子まで呪術師にならなきゃいけないわけじゃない」
「……ああ」
「だから、どっちも選べるようにしておきたい」
私は小さく笑った。
「五条さんが私にしてくれたみたいに」
その言葉に、脹相の表情がわずかに変わった。