第57章 初めては大体五条さん
「……じゃあ、三人で」
五条の顔が、ぱっと明るくなる。
「それそれ!」
「……」
脹相は、繋がれた私たちの手を見る。
「……三人で、か」
「嫌?」
「……いや」
脹相は、小さく息を吐く。
「嫌ではない」
その手に。
ほんの少しだけ、力が込められた。
右手に脹相。
左手に五条。
三人で手を繋いで歩く。
なんだか少しだけ変な感じがして。
「……子供みたい」
私が呟くと。
五条が笑った。
「いいじゃん。たまには」
「五条さんは本当に子供扱いするよね」
「してないって」
「してる」
「じゃあ、これは僕が繋ぎたいから繋いでるだけ」
「……」
「〇〇も嫌じゃないでしょ?」
「……うん」
「よし」
五条は満足そうに笑った。
その横で。
脹相は何も言わない。
ただ。
握った手を、離さなかった。
まだ。
何も決まっていない。
恋人でもない。
約束をしたわけでもない。
ただ。
これから先も、隣にいられたらいい。
そんな小さな願いを。
お互いに、胸の奥へしまっただけだった。
初めては、五条さんと。
それは、変わらない。
私の知らない私を知っている人。
私の過去を一緒に歩いてくれた人。
そして。
これから先の時間を、誰と歩くのか。
それはまだ、決まっていない。
けれど。
恋人として誰かと過ごしたことは、まだない。
だから。
これから先の「初めて」は。
まだ、誰のものでもない。
夜道を並んで歩く三人の影は。
さっきより、ほんの少しだけ近かった。
――初めてじゃなくていい。
――一番じゃなくてもいい。
ただ。
これからも、あなたの隣にいられたら。
それだけでいい。
そんな気持ちが生まれたことを。
まだ、誰も口にはしなかった