第56章 学校へのお迎え
「○○」
「ん?」
「その人、知り合い?」
「うん。まあ……」
答えようとしたところで、男子生徒が脹相を見る。
そして、少し探るような顔で尋ねた。
「彼氏?」
私は一瞬、言葉に詰まった。
胸が大きく跳ねる。
脹相も何も言わない。
ただ、私を見る。
その視線に、私は息を止めた。
――どうしよう。
否定するべきなのに。
なぜか、口が動かなかった。
脹相も黙っている。
けれど、その沈黙の中で。
ほんの少しだけ、期待してしまう自分がいた。
――もし、そうだと言ってしまえたら。
そんなことを考えて。
すぐに打ち消す。
だめ。
そんなことを望んだら。
今の関係には戻れなくなる。
すると
「……そうだ」
「え?」
私が振り向く。
脹相は男子生徒に向かって、淡々と言った。
「俺が、〇〇の彼氏だ」
「……!」
男子生徒が目を丸くする。
「マジ?」
「ああ」
脹相はそれ以上説明しない。
男子生徒は少し気まずそうに、
「じゃあ……そういうことなら」
と離れていった。
その背中を見送ってから、私はゆっくり脹相を見る。
「……今、彼氏って言った?」
「ああ」
「なんで?」
「……」
脹相は少しだけ黙った。
そして、何かを思い出すように目を伏せた。