第56章 学校へのお迎え
少し前。
あなたと二人で話していたときのことだった。
『私、学校では彼氏いることにしてあるんだ』
「……そうなのか」
『うん。いちいち言い寄られたりするの面倒だから』
「そうか」
『だから、適当に「付き合ってる人がいる」って言ってる』
あなたは、いつものように軽く笑っていた。
脹相はそのとき、何でもない顔で聞いていた。
けれど胸の奥では。
――自分がその相手だったら。
そんなことを、一瞬だけ考えていた。
もちろん、口にはしなかった。
そして、その話を聞いた数日後、まさに今日。
高専を出ようとしていた脹相に、五条が声をかけてきた。
「脹相、今日〇〇の迎えでしょ?」
「ああ」
「じゃあ、もし男の子に言い寄られたら、彼氏ってことにしちゃえば?」
「……彼氏?」
「そうそう。牽制になるでしょ」
脹相は黙った。
五条は面白そうに笑う。
「前に本人が、学校では面倒だから彼氏がいることにしてるって言ってたじゃん」
「ああ」
「だったら、脹相が彼氏ってことにしちゃえば、〇〇を守れるんじゃない?」
「……」
「本人が嫌じゃなければだけどね」
脹相はしばらく考えてから、短く答えた。
「……分かった」
「お、やる気?」
「そういう意味ではない」
「はいはい」
五条は笑いながら手を振った。
「嫌そうだったら、ちゃんとやめてあげてね」
「ああ」
そして今。
脹相は、あなたを見る。