第55章 人の好みを性癖みたいに言わないで
午後の高専。
授業の合間、私は廊下の窓から外を眺めていた。
校門の近くに、三輪ちゃんの姿が見える。
「あ、三輪ちゃんだ」
隣にいた五条が窓の外を見る。
三輪ちゃんは今日もスーツ姿だった。
それを見て、私は思わず呟く。
「……三輪ちゃんのスーツ姿、いいなぁ」
「ん?」
「私もスーツ着たいなぁ」
五条が私を見る。
そして、にやっと笑った。
「えー? 君に合うかなぁ?」
「何それ。失礼じゃない?」
「いやぁ、君って可愛い服の方が似合うじゃん」
「スーツがいいの!」
「へぇ~」
「スーツって大人って感じがするし。七海さんとか日下部さんとか、スーツ着てると格好いいじゃん」
「はいはい」
「何、その返事」
「君って本当にスーツが好きだよねぇ」
五条は楽しそうに笑った。
「もはや性癖」
「私の好みを性癖で片付けないで!」
「だってすごい熱量じゃん」
「スーツが好きなだけ!」
「はいはい」
そこへ。
「……スーツとは、あの服装か?」
後ろから脹相の声がした。
「脹相」
振り返る。
脹相は窓の外を見ていた。
「七海や日下部が着ているものだろう?」
「そうそう」
「お前はあれが好きなのか?」
「うん。格好いいよね」
「……そうか」
脹相はしばらく考えた。
その横で五条が口を開く。
「脹相、着てみる?」
「俺が?」
「うん。ちょうどいいのあるよ」
「なぜだ」
「最近、外部の関係者と会うことも増えてきたでしょ? そういうときのために、ちゃんとした服装を一着くらい持っておいた方がいいかなって」
「なるほど」
「サイズもたぶん合うし」
「そうなのか」
五条は私を見る。
「ね?」
「……なんで私を見るの」
「別に?」
絶対何か企んでいる。
でも、脹相が私を見る。
「……お前は、俺が着るのを見たいか?」
「……見たい」
正直に答えてしまった。
「そうか」
脹相は頷いた。
「では、着てみよう」