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①呪術廻戦〜脹相〜

第55章 人の好みを性癖みたいに言わないで



しばらくして。

脹相が黒いスーツを着て戻ってきた。

「……どうだ?」

「…………」

言葉が出ない。

黒いスーツ。

白いシャツ。

そして、手にはネクタイ。

「……それ」

「結び方が分からない」

「……」

五条が横から口を挟む。

「じゃあ、君がやってあげれば?」

「私が?」

「だって君、スーツ好きなんでしょ?」

「それは関係ないでしょ」

「でも結べる?」

「……結べるけど」

「じゃ、お願い」

五条があまりにも自然に言うものだから、断るタイミングを失った。

「……脹相、こっち来て」

「ああ」

脹相が私の前に立つ。

近い。

思ったよりずっと近い。

私はネクタイを受け取った。

「ちょっと顔、下げて」

「こうか?」

脹相が素直に顔を下げる。

目の前に脹相の顔。

近い。

近すぎる。

「……」

「どうした?」

「なんでもない」

心臓がうるさい。

私はネクタイを脹相の首に回す。

指先が首元に触れる。

そのたびに緊張する。

「……動かないでね」

「ああ」

ネクタイを結んでいく。

「……よし」

最後に形を整える。

「できた」

顔を上げる。

目の前には、スーツ姿の脹相。

「…………」

「どうだ?」

「……格好いい」

「そうか」

脹相が少し嬉しそうにする。

その瞬間。

「……ちょっと待って」

「何だ?」

「締めすぎたかも」

「そうなのか?」

「うん。ちょっと苦しくない?」

「……少し」

「ごめん、緩めるね」

そう言って手を伸ばしかけた。

そのとき。

脹相が自分のネクタイに手をかけた。
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