第54章 呪いを受けて幼児化してしまった
しばらく遊んでいると、五条が時計を見た。
「そろそろ寝る時間かな」
「……ねる?」
「うん。今日はいっぱい遊んだしね」
五条が私のほうへ手を伸ばす。
「おいで。僕と一緒に寝ようか」
以前なら、素直にその手を取っていたのかもしれない。
けれど今は――
私は脹相のひざの上から動かなかった。
「……や」
「ん?」
「ここがいい」
小さな手で、脹相の服をぎゅっと掴む。
「脹相といる」
「……そっか」
五条が困ったように笑う。
「でも、もう寝る時間だよ?」
「脹相と……」
声が少し震える。
五条が気づいた時には、私の目には涙が浮かんでいた。
「……離れたくない」
「……」
五条の顔が固まる。
「泣かないでよ」
すぐにしゃがみ込んで、私の顔を覗き込む。
「君の泣き顔には僕はすごく弱いんだ。」
「でも……」
私は脹相の服を握ったまま、首を横に振る。
「ちょうそうがいい……」
「……うん」
五条が小さく息を吐く。
「それはずるいなぁ」
困ったように笑いながら、私の頭を撫でる。
「そんな顔されたら、僕何も言えないじゃん」
そして、脹相を見る。
「……脹相」
「なんだ?」
「この子、今日は君と離れたくないみたい」
「……そうらしいな」
脹相が私を見る。
涙目のまま、ぎゅっと服を握っている。
その姿に、脹相の表情も柔らかくなる。
「なら、俺が一緒に寝よう」
「……いいの?」
私が顔を上げる。
「ああ」
脹相は迷いなく頷いた。
「お前が安心して眠れるなら、それが一番だ」
「……!」
涙が残ったまま、顔がぱっと明るくなる。
「ほんと?」
「ああ。本当だ」
「やった……!」
私は嬉しくなって、脹相の胸に飛び込む。
「ちょうそう、すき!」
「……っ」
脹相の顔が一瞬で赤くなる。
五条はそれを見て、呆れたように笑った。
「はは。じゃあ今日は脹相にお願いしようかな」
「うん!」
「ただし、ちゃんと寝るんだよ?」
「はーい」
元気よく返事をして、私はまた脹相にぎゅっと抱きつく。
五条はそんな私を見て、少しだけ寂しそうに笑った。
「……僕のところじゃなくても、安心して眠れるようになったんだね」
そう呟いてから、すぐにいつもの笑顔に戻る。