第54章 呪いを受けて幼児化してしまった
その時。
「……ん」
小さく身じろぎする。
「起きた?」
五条が覗き込む。
「……ごじょさん?」
眠たげに目を開ける。
「おはよう」
「……ここ、どこ?」
「君のお家だよ」
そう言われて、私は五条の肩越しに周囲を見回した。
そこで――脹相と目が合った。
見知らぬ人。
私は少しだけ五条の胸元に顔を隠す。
「怖くないよ」
五条が笑って、脹相を見る。
「この人、脹相だよ」
「……ちょうそう?」
「そう。君と一緒に住んでる人」
私はもう一度、脹相を見る。
じっと。
じっと見つめる。
脹相も何も言わずに、こちらを見ている。
やがて私は、五条の腕の中から小さく手を伸ばした。
「……脹相」
「ん?」
「……ほしい」
「……」
空気が止まった。
脹相が固まる。
「……何?」
五条も一瞬、目を丸くした。
それから、口元を押さえる。
「……ふふ」
「五条。」
「いや、ごめんごめん」
笑いを堪えながら、五条が私を見る。
「脹相が欲しいんだ?」
「……うん」
幼い私は、何の疑いもなく頷く。
「脹相、ほしい…」
「……」
脹相はしばらく言葉を失っていた。
そして、やがて小さく息を吐く。
「……俺でいいのか」
その声は、驚くほど優しかった。
「うん」
私はまた頷く。
「ちょうそうがいい」
五条が脹相を見る。
「だってさ」
「……ああ」
脹相は困ったように笑った。
「俺も、昔のお前に会えたようで嬉しい」
そして、私に向かってそっと手を差し出す。
「……よろしくな」
私はその手を見つめてから、五条の腕の中で嬉しそうに笑った。
「脹相、ほしい」
そう言って小さな手を伸ばした私を見て、五条は一度脹相を見た。
それから、くすっと笑う。
「この子、脹相と一緒にいたいみたいだし」
「……そうなのか?」
「うん。だったら今日は、僕の家に一泊する?」
「五条の家に?」
「そう。昔のものも色々残ってるし、今のこの子ならそのほうが落ち着くと思う」
脹相は少し考えてから頷いた。
「それがいいだろう」
「じゃ、決まり」
五条はそう言って、私を抱いたまま家へ向かった。