第53章 禪院家からお見合いの話が来てたの知らなかった
「……ねえ、脹相」
「なんだ?」
「私、やっぱり納得した相手とじゃないと結婚したくない」
「ああ」
「でも……」
そこで言葉が止まる。
「もし、本当に貰い手がなくなったらどうしよう」
口にしてしまうと、急に心細くなった。
さっき直哉に言われた言葉が、頭の中に残っている。
今はいい。
でも、何年か経ったら。
その時、本当に誰にも選ばれなかったら――。
そんな私を見て、脹相は何でもないことのように言った。
「俺がいるだろう」
「……え?」
あまりにも自然に言われて、目を瞬く。
脹相は真面目な顔をしたままだった。
「だから、心配する必要はない」
「ふふっ」
思わず笑ってしまう。
「それって……プロポーズ?」
「……」
脹相が固まった。
「いや、そういう意味では……」
珍しく言葉に詰まる姿がおかしくて、私はまた笑ってしまった。
「ごめん、ごめん」
そう言いながらも、胸の奥がほんのり温かくなる。
そして、少しだけ考えてから。
「じゃあ……」
脹相を見る。
「本当に貰い手がいなかったら、その時はそうさせてもらおうかな」
冗談半分。
けれど、嬉しさも半分。
そんな気持ちを隠すように、私は微笑んだ。
「……約束だな」
脹相が静かに答える。
その声が思いのほか真剣で、今度は私のほうが何も言えなくなった。