第51章 泥酔したら触れたい
さっきより近い。
喋らなくても、吐息が触れる。
時々、頬が触れる。
そして、ほんの一瞬。
また唇が当たったような感覚がする。
私は思わず首をすくめた。
「……?」
「なんでもない」
「そうか」
脹相は気づいていないのか、気づいていても酔いのせいで深く考えていないのか。
ただ、私を抱きしめたまま目を閉じている。
私は彼の髪を撫でる。
背中もゆっくり撫でる。
そして、首筋に触れる熱い吐息に耐えながら、彼の服を無意識に少しだけ掴んだ。
「……離れないで」
首元から聞こえた声に、胸が締めつけられる。
「……離れないよ」
そう答える。
脹相の腕が、ほんの少しだけ強くなる。
私も抱き返す。
好きとは言わない。
彼も言わない。
ただ、首筋に顔を埋めたまま安心したように息を吐く脹相と、その背中を撫で続ける私。
言葉にしなければ、まだ今までの関係のままでいられる。
そう思っているのに。
触れ合う距離だけが、少しずつ。
今まで知らなかったところまで近づいていた。