第51章 泥酔したら触れたい
「…………」
心臓が跳ねる。
喋るたびに。
声を出すたびに。
吐息と一緒に、唇が触れているような気がする。
意識すればするほど、そこだけ感覚が鋭くなっていく。
「……どうした?」
「なんでもない」
「そうか」
脹相はまた首筋へ顔を戻す。
そして、無意識なのだろう。
私の匂いを深く吸い込むように、ゆっくり息をする。
「……」
私は息を止めた。
もう一度。
深く。
まるで安心できるものを探すように、私の髪や首元に顔を寄せている。
「……脹相」
「ん……」
「何してるの?」
「……わからない」
少し眠そうな声。
「ただ……」
「ただ?」
「お前の匂いがする」
「……」
「落ち着く」
そう言って、また小さく息を吸う。
私は耳まで熱くなるのを感じた。
「……そんなに嗅がないで」
「嫌か?」
「……嫌じゃないけど」
「なら……いい」
「そういう問題じゃ……」
言いながら、私は彼の髪へ手を伸ばした。
撫でる。
首筋に顔を埋めたままの脹相の髪を、指先でゆっくり梳く。
すると、彼が少しだけ身じろぎした。
「……それも好きだ」
「何が?」
「お前が髪を撫でるの」
「……じゃあ、撫でてあげる」
指を通す。
何度も。
そのたびに脹相の身体から力が抜けていく。
私はいつの間にか、彼の背中にも腕を回していた。
抱きしめるというほど強くはない。
ただ、身体を預けてきた彼を支えるため。
そう思っていた。
けれど。
「……もう少し」
「何?」
「抱いてくれ」
胸が跳ねる。
「……こう?」
腕に少しだけ力を込める。
「……ああ」
脹相も私の背中へ腕を回す。
肩に寄りかかっていた身体が、さらに近くなる。
そしてまた、首筋へ顔が埋まる。
「……っ」