第50章 泥酔
現在。
「……だから」
五条は玄関で靴を履きながら言う。
「ちょっと確認したかっただけ」
「何を?」
「脹相が君のこと、ちゃんと大事に思ってるか」
私は一瞬黙る。
ソファで眠っている脹相を見る。
「……そんなの」
「うん?」
「聞かなくても分かるじゃん」
「まあね」
五条は笑った。
「でも、保護者としては確認したくなるんだよ」
「……」
その言葉に。
少しだけ胸が温かくなる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「送ってきてくれたのもありがとう」
「いいよ」
「でも!」
私は五条を睨む。
「こんなに飲ませないで!」
「……はい」
「本当に!」
「ごめんなさい」
「脹相、明日絶対二日酔いだよ」
「……たぶんね」
「もう!」
私は怒りながらも。
眠っている脹相に毛布をかける。
五条はその様子を見ながら。
小さく笑った。
「……まあ」
誰にも聞こえないくらいの声で。
「ちゃんと大切にしてるみたいだから、いっか」
「五条さん、何か言った?」
「何も~」
「絶対なんか言ったでしょ」
「言ってないって」
五条は笑いながら玄関を出ていく。
扉が閉まる直前。
「おやすみ」
「うん。おやすみ、五条さん」
扉が閉まる。
静かになった家の中。
私はソファで眠る脹相を見つめる。
「……もう」
少し怒って。
でも。
少しだけ笑って。
「何話してきたんだろうね」
眠っている脹相は答えない。
ただ。
「……お前……」
寝言のように呟いて。
私のほうへ手を伸ばす。
私はその手を取る。
「はいはい。ここにいるよ」
その言葉を聞いた五条は。
家の外で小さく笑っていた。
――これなら。
もう、心配する必要はなさそうだ。