第49章 お見合い
今暮らしている家を五条から贈られたのは、私が一人暮らしをしたいと言ったことがきっかけだった。
「一人で暮らしてみたい」
そう言った私に。
五条は、しばらく私の顔を見て。
「いいよ」
と、あっさり答えた。
ただし。
家は五条が選んだ。
場所も。
周囲の環境も。
そして、結界の内側。
五条はそれを当然のように決めた。
私が一人暮らしをしたい。
それなら、自由に暮らせる場所を与えてやればいい。
けれど。
完全に手の届かない場所へ行かせるつもりはなかった。
五条悟にとって、私は保護すべき存在だ。
何かあったとき、すぐに駆けつけられる場所。
外から簡単に干渉されない場所。
五条の結界の内側。
それが、五条にとっての最低条件だった。
本人には、そこまで説明しなかった。
「ここなら安心でしょ」
それだけだった。
そして。
私が一人暮らしを始めてしばらくした頃。
「五条さん」
「んー?」
「脹相も一緒に住んでいい?」
「…………」
五条は、珍しくきょとんとした。
「……脹相?」
「うん」
「ここに?」
「うん」
「二人で?」
「そう」
五条は数秒、私の顔を見る。
私は真剣だった。
冗談ではない。
「……どうして?」
「一人より、二人のほうがいいかなって」
それだけ。
けれど五条には、何となく分かった。
私が自分なりに考えている。
誰と暮らしたいのか。
誰を自分の生活の中に入れたいのか。
その答えを。
「……そっか」
五条は、それ以上聞かなかった。
「いいよ」
「本当に?」
「うん」
あまりにも早い返事に、私のほうが驚く。
「もっと聞かれると思った」
「君がちゃんと考えて言ってるなら、僕が反対する理由ないでしょ」
「……ありがとう」
「ただし、ここは僕の結界内だからね」
「うん」
「そこだけは忘れないで」
「分かってる」
五条は笑う。
そして、心の中で思う。
――まあ、君が選んだ相手なら。
自分が守れる場所にいる限り。
それでいい。
脹相を住まわせることに反対する理由など、五条にはなかった。
むしろ。
あなたが自分の意思で「この人と暮らしたい」と思える相手を見つけたこと。
それ自体を、五条は少し嬉しく思っていた。