第49章 お見合い
お見合いの話が来るのは、もう珍しいことではなかった。
二ヶ月に一度くらい。
五条悟に近づきたい人間から。
あるいは、五条に目をかけられている私自身を気に入った人間から。
「……また?」
テーブルの上に置かれた釣書を見て、私はため息をついた。
「まただねぇ」
向かいに座る五条は、いつものように軽い調子で答える。
「どうせ、五条さんと縁を持ちたいんでしょ」
「まあ、そういう人もいるね」
「私と結婚すれば、五条さんに目をかけてもらってる娘を嫁にもらったってことになるから」
「うん」
五条は否定しない。
私は釣書をめくっていく。
家柄もいい。
職業も申し分ない。
年齢も近い。
そして、写真を見る限りでは整った顔立ちをしている。
「普通に君の容姿が好きって人もいるんだよね」
「会ったこともないのに?」
「一目惚れってそういうものでしょ」
「……よく分かんない」
私は釣書を閉じる。
「でも、受けるよ」
「ん?」
「お見合い」
五条がこちらを見る。
「断らないの?」
「うん」
「なんで?」
少し考えてから、私は答えた。
「私が五条家に貢献できることって、それくらいじゃない?」
五条が黙る。
「五条さんに守ってもらってるし。生活も用意してもらってるし」
「……」
「だから、せめてこういう話くらいは受けたほうがいいかなって」
「君さぁ」
五条が苦笑する。
「僕、そんなこと頼んだ?」
「頼まれてないけど」
「じゃあ、しなくていいじゃん」
「でも……」
「君が嫌なら断っていいんだよ」
五条は笑った。
「君の人生なんだから」
「……」
「僕は、君にはいい人と巡り会ってほしいだけ」
「いい人?」
「うん」
五条の声が少しだけ柔らかくなる。
「君を五条家の人間としてじゃなくて、君自身として見てくれる人」
「……」
「そういう人と一緒になれたらいいなって、僕は思ってる」
私は少し笑う。
「五条さんって、意外と保護者してるよね」
「意外とって何?」
「普段ふざけてるから」
「ひどいなぁ」
五条は笑った。
けれど、その目は優しかった。