第48章 プールでモヤる
(……俺が受け止めたかった)
その考えが浮かんで、自分でも驚く。
「…………」
双眼鏡を下ろす。
「……何を考えているんだ、俺は」
嫉妬するようなことではない。
彼女は無事だった。
悠仁のおかげだ。
それなのに。
(……羨ましい)
認めてしまう。
(俺も、ああやって守りたい)
彼女が転びそうになったとき。
怖がったとき。
困っているとき。
真っ先に自分が手を伸ばせるようになりたい。
「…………」
脹相は再び双眼鏡を覗く。
彼女はもう立ち上がっていた。
悠仁が心配そうに、
「本当に大丈夫?」
と聞いている。
「うん! 全然平気!」
彼女が笑う。
その笑顔を見た瞬間。
脹相の表情も少し緩んだ。
(……無事なら、それでいい)
そして、ほんの少しだけ目を細める。
(……悠仁、ありがとう)
心の中では、ちゃんと感謝している。
けれど。
(…………)
やっぱり少しだけ思ってしまう。
(次は……俺が間に合えばいい)
双眼鏡をしまう。
そして木の上から彼女を見つめながら、静かに呟いた。
「……怪我をしなくて、本当によかった」
その声には、嫉妬よりもずっと強い――
彼女を大切に思う気持ちが滲んでいた。