第48章 プールでモヤる
プールサイド。
彼女が悠仁と話しながら歩いていた、そのときだった。
「わっ――」
足が滑る。
「危ない!」
悠仁が咄嗟に腕を伸ばした。
そのまま、彼女の身体を抱き止める。
「大丈夫!?」
「う、うん……ありがとう、悠仁」
――少し離れた木の上。
双眼鏡を覗いていた脹相は、息を止めた。
「…………」
一瞬。
頭の中が真っ白になる。
(……転んだ)
まず、それだけだった。
(怪我は?)
彼女の顔を見る。
痛そうにはしていない。
立ち上がろうとしている。
「……よかった」
胸の奥から、ようやく息が抜ける。
だが。
(…………)
悠仁の腕。
彼女を抱き止めている。
「…………」
脹相の眉間に、ゆっくり皺が寄った。
(……悠仁が受け止めたのか)
当然だ。
近くにいたのだから。
悠仁は悪くない。
むしろ、よく助けてくれた。
頭では分かっている。
(……助けてくれて、ありがたい)
そう思う。
本当にそう思う。
なのに。
(…………俺が)
胸の奥が、少しだけざわつく。
(俺がそこにいれば)
自分が彼女の隣にいたなら。
転ぶ前に支えられたかもしれない。
それに――