第46章 新しい水着を見て欲しい
「…………」
脹相は黙り込む。
そして、ふと気づく。
自分は彼女のことを、思っていた以上に独占したいのかもしれない。
「……困ったな」
その呟きには、ほんの少し苦笑が混じっていた。
彼女が可愛い。
大切だ。
だから他の誰かに傷つけられてほしくない。
そして――
できることなら、自分だけを見ていてほしい。
「…………」
しばらくして、脹相は立ち上がった。
彼女の部屋の前まで行く。
だが、ノックはしない。
言うべきか迷う。
『その水着で他の男の前に行くのか』
なんて言えるはずもない。
結局、何も言わずに踵を返す。
その背中には、まだ少しだけモヤモヤが残っていた。
すると後ろから。
「脹相?」
「……!」
彼女が顔を出した。
「どうしたの?」
「いや……」
脹相は少し黙る。
そして、彼女を見る。
「……楽しんでこい」
「うん!」
彼女が笑う。
その笑顔を見た瞬間、脹相の表情が柔らかくなる。
「……ただ」
「?」
「何か嫌なことがあったら、すぐに俺に言え」
「ふふ、分かった」
「……約束だ」
「うん。約束」
彼女が嬉しそうに頷く。
脹相はその手をそっと握る。
本当は、
『他の男に見られるのが嫌だ』
と言いたかった。
でも言わなかった。
彼女の楽しみを奪いたくないから。
ただ、手を握ったまま、心の中でひとつだけ思う。
(……帰ってきたら、俺のところに来てくれれば、それでいい)
そして彼女が去ったあと。
「…………」
また一人になった脹相は、静かに呟いた。
「……やはり、心配だ」
その日の脹相は、彼女が出発してから、気になって仕方がなかった。