第39章 キスしてたって聞いたんだけど
「え、まさか――」
「悠仁」
脹相の声が低くなる。
「……それ以上聞くな」
「分かった分かった!」
悠仁は笑いながら両手を上げた。
「でもさ」
「なんだ?」
「二人とも、なんか変じゃない?」
「……」
「前から仲良かったけど、最近もっと距離近くない?」
私は思わず脹相を見る。
脹相もこちらを見る。
「……そうかな」
「そうだよ」
悠仁は楽しそうに笑う。
「まあ、2人がが嬉しそうだからいいけど」
「……何?」
「なんでもない!」
そう言って悠仁は去っていった。
「……」
残された私たちは、しばらく無言だった。
「……脹相」
「なんだ」
「ごめんね」
「何がだ?」
「悠仁に変なこと言われて」
「気にするな」
脹相はそう言って、少しだけ笑う。
「恋人のふりをしたこと自体は、俺は後悔していない」
「……本当?」
「ああ」
「……よかった」
私が笑うと、脹相も目を細めた。
ただ。
悠仁には言わなかったことが一つある。
あの日。
キスはしていない。
けれど。
唇が触れる寸前まで近づいた瞬間。
脹相も私も。
お互いを、少しだけ意識してしまったこと。
それだけは。
二人だけの秘密だった。