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①呪術廻戦〜脹相〜

第36章 恋人のふり


「……脹相」

夕食を終えた夜。

私はソファに座っている脹相の前で、さっきから何度も口を開きかけていた。

「どうした?」

「えっと……お願いがあるの」

「何でも言え」

あまりにも真っ直ぐ見つめられて、余計に言いづらくなる。

「……笑わない?」

「笑わない」

「絶対?」

「ああ」

私は度深呼吸してから、意を決して口にした。

「……恋人のふりをしてほしい」

「…………」

脹相が固まった。

「……脹相?」

「すまない。もう一度」

「恋人のふりをしてほしいの」

「……俺が?」

「うん」

脹相は黙ってしまった。

表情こそいつも通りだが、頭の中は大混乱だった。

――恋人。

〇〇の恋人。

もちろん「ふり」なのは分かっている。

それでも、その言葉だけで胸が苦しいほど高鳴った。

「……理由を聞いてもいいか」

「昔の知り合いに会うの。昔から何度も恋人がいるか聞かれてて……」

私は困ったように笑う。

「あまりにもしつこいから、今度こそ、恋人がいるって分かってもらいたくて」

「……そういうことか」

「お願いできる?」

「……分かった」

返事は早かった。

「本当に?」

「ああ」

私がほっとしたように笑う。

その笑顔を見て、脹相は胸の奥で思う。

――引き受けない理由など、最初からなかった。

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