第14章 『応答る』
その後気づけば三十分、
何を話したかと言われれば、
ほとんど大したことじゃない。
部活や研究、
夕飯、今日の天気。
大学で見た変な猫。
『先生、猫好きですか?』
『嫌いではない』
『じゃあ好きなんですね』
『なぜそうなる』
『嫌いではない=好き寄りです』
『論理が飛躍している』
「…………」
私は少し笑って、
そのまま指を動かした。
『じゃあ私のことは?』
送信した。
「…………」
画面から指を離す。
送った文字がそこに残っている。
──じゃあ私のことは?
一瞬瞬きをする。
そして、もう一度読む。
「…………え?」
今、私、何送った?
急に心臓が速くなる。
取り消したい。
でも、既読がついた。
「…………」
最悪だ。
先生はどう思ったんだろう。
冗談、そう、冗談だ。
冗談って送ろう。
『今のは──』
打って止まる。
スマートフォンが震えた。
『嫌いではない』
「…………」
動けなくなった。
嫌いではない。
猫と同じ。
いや、同じなのか。
「…………」
何を期待したんだろう。
自分で送っておいて。
少し恥ずかしくなる。
『なんだ 猫と同じか笑』
送信。
すぐに既読がつく。
でも返信は来ない。
「…………」
やっぱり変なこと聞いた。
もう寝よう。
そう思った時、
スマートフォンが震えた。
『同じとは言っていない』
「…………」
もう一度文字を見る。
『同じとは言っていない』
「…………」
胸が跳ねる。
どういう意味?
聞きたい。
でも、聞いていいのか分からない。
入力欄を開く。
『どういう意味ですか?』
「…………」
少し迷って送信した。