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【G@lileo】音色の方程式

第14章 『応答る』




 火曜日。
 午後三時十一分。

 いつもの場所で練習をしていた。


 「…………」


 フルートを下ろす。

 まだ先生は来ない。

 でも、
 今日は妙に落ち着いていた。

 来るかどうか分からない。
 ではなく、多分来る。

 それを知っているから。


 「…………」


 息を吸う。
 もう一度フルートを構える。


 数分後。


 「今日はテンポが速いな」


 その声に振り返る。


 「先生」

 「何だ?」

 「本当に来た」

 「来ると言っただろう」

 「恐らくって」

 「結果的に来た」

 「それ、来るって言ったことになります?」

 「少なくとも、来ないとは言っていない」

 「ずるい」

 「何がだ?」


 思わず笑ってしまう。

 こういうところも、
 やっぱりいつもの先生だ。

 さっきまで空いていたベンチに、
 先生が座る。

 それだけでいつもの場所が、
 いつもの場所に戻った気がした。


 「先生」

 「何だ?」

 「今日、何時まで大学いるんですか?」

 「まだ分からない」

 「遅くなりそう?」

 「恐らく」

 「またそれ」

 「正確な時間を提示できない以上、そう答えるしかない」

 「じゃあ」


 私はフルートを構えながら言った。


 「帰る時、連絡してください」

 「何故?」

 「ちゃんと帰ったか確認です」

 「僕は子供じゃない」

 「知ってます」

 「なら必要ない」

 「先生、私の夕飯気にしたじゃないですか」

 「…………」

 「だから私も」

 「…………」

 「だめですか?」

 「いや」

 「じゃあ、お願いします」

 「……分かった」


 息を吸う。
 音が始まる。

 湯川は本へ視線を落とした。


 ──帰る時、連絡してください。


 「…………」


 数行ページをめくる。

 それでもその言葉だけが、
 妙に残った。





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