第12章 『離隔る』
翌朝。
第十三研究室で、
湯川は机に向かっていた。
論文と数式、コーヒー。
昨日までと何も変わらない風景だ。
「…………」
少なくとも、
外から見れば。
湯川はペンを置いた。
分かってしまったからといって、
何かを変える必要があるとは限らない。
彼女は学生で自分は大学教員。
直接、指導する立場ではない。
学部も違う。
成績評価にも関与しない。
それでも、
教員と学生であることに変わりはない。
そして、
彼女が自分をどう思っているのか。
それも分からない。
「…………」
演奏会で、
自分が来て嬉しかったと言った。
以前には、恋人の有無を尋ねられた。
よく話すしよく笑う。
けれど、
彼女自身が自分たちをどう呼んでいたか、
湯川は覚えている。
──友達、だと。
「…………」
それ以上の意味を、
勝手に与えるべきではない。
なら、
今まで通りでいればいい。
そう考えた。
「…………」
──今まで通り。
その言葉が妙に引っかかった。