第11章 『意識る』
夜、
第十三研究室。
机の上には、
朝から置かれたままの演奏会のチラシがあった。
「…………」
湯川はそれを見る。
結局、
今日も捨てなかった。
火曜日、
彼女はいつも通りやって来た。
いつも通りフルートを吹き、
いつも通り話し、いつも通り笑って、
そして、
いつも通り帰っていった。
何も変わっていない。
「…………」
変わったのは、
やはり自分だけだった。
湯川はチラシを手に取る。
昨日の日付、演奏会の名前、
彼女が所属する楽団。
もう必要のない情報だ、
「…………」
それでも、
再び朝と同じ場所へ戻した。
今度は、
理由を考えなかった。
考える必要がもうなかった。