第10章 『帰結る』
湯川は客席から舞台を見ていた。
そして、
ほどなくして彼女を見つけた。
フルート奏者の位置は、
おおよそ決まっている。
見つけること自体は難しくない。
「…………」
指揮棒が下り、多くの音が重なる。
その中に彼女の音がある。
今日も分かる。
以前と同じように。識別できる。
しかし、
「…………」
何かが違う。
音ではないことは分かった。
いつもの練習場所では、
何度も吹き直し迷う。
時には、湯川に文句を言う。
笑うし、将来について悩むこともある。
けれど、
舞台の上の彼女には迷いがなかった。
周囲の音へ溶けながら、
必要なところでは、確かに前へ出る。
湯川は舞台を見続けた。
演奏を分析するつもりだった。
テンポや音量、呼吸、音程。
観察すべき要素はいくらでもある。
それなのに、
気づけば視線は一人の奏者へ戻っていた。