【dc】Slate Bullet Apathy【prsk】
第1章 First Chapter IFFY
「ほんと、いい顔をしているよな。お前ら」
わたしの顎を乱暴に掴んだ男は、咥えていたタバコを首筋に当てた。
「あ゛!」
「っ!」
後ろで哀が咄嗟に動こうとしたのを、慌てて手で制して抑え込んだ。大した力はないけど、少しだけ大人しくなったのを感じた。
(今動いたら余計にダメ)
その意図が伝わったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。だけど、まあ、どちらにせよ今は、別に気にする必要のない話題だろう。
「目一杯かわいがってやるよ」
今ので十二分にわかったが、やはりこの人の可愛がるはいい意味ではない。
「まずはそっちの女から......」
「その子に手を出すな」
「なんだ」
明らかに視線が灰原に向いていたのに気がついたわたしは、必死で引き留める。
灰原がやめてとも言いたげな顔をしていたけど、無視した。
「全部、わたしに。......だめかな?」
そこからは地獄だった。
殴る蹴るの暴力行為は当たり前。わたしは絶対に逃げることも泣くこともしなかった。
後ろでは灰原が怯えていた。ああ、そうか、この子、黒の組織にいた時代にこんな暴力を受けてたっけ?
(どうせ涙は出ないけどね)
男はきっと弱い物をいじめる自分に酔いしれているんだと思う。そんな奴に対して弱音を吐くなんて、負けたも同然だ。そんなわけにはいかない。わたしのプライドが許せない。
「根性あるじゃねえか。ちょっと待ってろよ」
そう言って男は奥へ戻った。何をする気なのか。内心どこかで知っている自分がいてなんだか怖い。
「ちょっと、どうしてなんであんなこと言ったの!」
「わたしは年上だよ」
「それでも、」
「それに、慣れてるし」
「え? それって、どういう……」
「そんなことはどうでもよくて、いい? 逃げて! あの人がわたしに集中している間に逃げるんだ。あの人は殴ることにしか興味ない。だからきっと......。とにかく、わかった?」
逃げた後は通報なり好きにすればいい。わたしはその間の時間稼ぎだ。この子はコナンにおける最重要人物。それに対して自分はただのモブ。ならば、身を挺して守るなんて当たり前の話だ。
「わざわざそんなことをしなくても......」
「大丈夫」
「嘘」
「いいからいいから」
男が戻ってくる気配がしたわたしは元の位置に戻った。
